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指間流砂滑過

別れも言えない

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別れも言えない


「ああ。近づいてきた。もうすぐみたいだ」
 高梨は、ふいに落ち着いたしゃべり方に戻った。一時的に錯乱を脱したらしい。
「……もうすぐって、何のこと?」
「あんなに怖かったのが、ほんと、嘘《うそ》みたいだ。もう怖くない。胸がうきうきする。ただ眠いだけで。このまんま……」
「高梨さん! だめよ! しっかりして!」
「こんなに、まわりがうるさくっちゃ、よ。囀りばっかりで。そこら中。天使が」
 高梨は、長いあ韓國 醃肉汁くびをした。
「ああ。暗くなってきた」
「高梨さん! よく聞いて。これから、私が……!」
 早苗は、懸命に話しかけようとした。
「眠くてたまらない。おやすみ。早苗」
 唐突に電話は切れた。
 早苗の耳の中では、通信の途絶を示す信号音だけが反響し続けている。
 なぜか、もう二度と高梨の声を聞くことはできないのではないかという、恐ろしい予感があった。

 朝の空気は、不愉快なくらい頬《ほお》に冷たく、真正面から射し込む陽光は、疲れた網膜には眩《まぶ》しすぎた。
 荻野信一は、一人、とぼとぼと歩き韓國 午餐肉続けていた。途中、駅へ向かう何人もの勤め人たちとすれ違う。信一は、彼らとは視線を合わせなかったし、向こうも、彼には目もくれようとはしない。
 もう、身も心も、ぼろぼろだという気がしていた。彼を支えていたのは、自分の部屋に帰れば、『紗織里《さおり》ちゃん』が待っていてくれるという一念だけだった。
 だが、ようやく『コーポ松崎』へと帰り着くと、一階の共用廊下の前に、箒《ほうき》を手にした小柄な老人がいるのが見えた。信一は、思わず舌打ちしてしまい、その音を聞かれなかったかと思ってどぎまぎした。
 大家の松崎老人だ。中学校の教師を定年になってからは、よほど暇なのだろう。見たところ、ゴミなどどこにも落ちていなかったが、常に身韓國食譜体を動かしていないと気がすまない性分らしく、毎日早朝から、コーポの周りの清掃に励んでいる。
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